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- 歯科医院の経営 -

2020.02.15 歯科医院を安心して経営していくために

歯科医院コンサルティング事例


 

ぶれない経営理念で地域にアプローチ

所在地:都内S区私鉄駅前

都内S区にて開業し、立上げに苦労されたA先生のケース

 

株式会社ジャパンデンタル 東京支店 支店長

星 光一

 

事案概要

増患増収対策 事例①

都内S区の私鉄駅前商店街を抜けたテナントビル2階にての開業から当社の別の担当がお手伝いさせていただきました。いくつかの増患対策もほどこしていましたが、開業後の立ち上がりが芳しくなく、東日本大震災の影響も相まってか患者さんがなかなか伸びない状況でした。このような段階で、私が後任担当者としてA先生とお目にかかりました。その時に収入を伸ばし、当社コンサルティングを卒業するまでのある歯科医院の軌跡を辿りたいと思います。
 
開業当初、足元の人口はしっかりと見込めたのですが、周辺に競合歯科医院が多くあり患者さんが流れてしまっている状況でした。開業からきちんと立ち上がって経営が安定するまでは、生計費も抑えて頑張るという点を踏まえてスタートした開業で、計画の段階から固定費(人件費や借入の月額返済額など)は抑えられていました。見込んだ収入にまだまだ届かない厳しい時期に、私がお手伝いを始めた当初からA先生と一緒に取り組む時間的なゆとりがあったのは、開業時の事業計画をしっかりと煮詰めていたから。新規開業において開業計画が大事! これほんと大切です。
 
 

ポイント①
開業前にはしっかりとした事業計画を!自身の診療コンセプトにあったリスクマネジメントを織り込んでください。

開業前にできることをしっかりとやっても、それでも開業してからの指針は先生ご自身で創っていかなければならないのが歯科医院経営の大変なところ。A先生は当初からぶれてはいけないと担当が実感したのが、診療所の診療コンセプトです。ひとくちに経営といっても、一般論ではなく自院の経営では何が正解なのかは正直なところ後から振り返るのでなければ、その段階で判断するのはなかなか難しいものです。だからこそ「自分がどんな医療を地域に提供していきたいのか?」それが非常に大切だと思います。
 
A先生は、明確にそれを持っていました。それは、安心して納得のいく歯科治療を提供するというものでした。具体的には、「患者さんの声に耳を傾けることを強く意識する」というもの。当社の歯科医院コンサルティングでは、そんなA先生の考えが地域の需要とマッチしているか、又しっかりとスタッフとも共有できているのか、そんな相互確認から行います。新規開業時の市場調査でも、本当にその場所で開業することが、先生のコンセプトにマッチしているのでしょうか?という問いも行います。
 
今回私自身は既に開業した後からのお手伝いとなりましたが、それでも短時間で何とかなるものではありません。A先生とは「経営はマラソンに似ていますね」などとコンサルティングの中でよく話をしたりしました。私自身がマラソンをやっていた訳ではないのですが、目標に向って、長い道のりを走るというとそんな例えがぴったりくるように思います。マラソンに例えたからという訳ではないのですが、A先生と一番初めに当社コンサルティングを始めた時に、短期・中期・長期それぞれの目標を設定して共有しました。

 
 


 

ポイント②
明確な目標設定を行いましょう! 短期の目標はもちろん、中、長期的な目標も改めて確認してみてください。 目標を数字化するのも大切です。

具体的には、あまり収入が伸びていない、今まさに大変な状況を早く脱するための短期目標、次に収入が安定してからもう一段階上を目指すステップとしての中期目標、最終的に開業時から描いていた目標を長期目標といった感じです。 
 
《短期目標は現状分析で改善策を検討》
収入が伸び悩んでいるのは何が原因?臨床経験と提供する医療?もしくは、今ある歯科医院周辺の市場性の変化?また逆に自院の強み、弱みは?など、自身の医院のコンディションを認識するところから始まります。
 
もちろん、そこでも軸となるのは、A先生の診療コンセプトです。A先生には開業時から、前述の通り「じっくりと患者さんに説明して、患者さんに適した医療を提供していきたい」という考えがありました。A先生は、臨床家として開業後も常に研鑽を続ける勉強を欠かさず、積極的に臨床に繋がる知識を得ることを継続して行っていました。
 
勤務しているスタッフは明るく、歯科衛生士さんも親身に患者さんに受け答えするアットホームな院内環境はできていました。しかしながら、市場性は開業前の調査からかなり変化していました。足元の人口はさらに増加傾向にあるにもかかわらず、それ以上に競合歯科医院も増加しており、マーケット的には競合状況が厳しい市場性となってしまっていました。
 
当社のコンサルティングツールの一つであるレセプト分析(患者さん集客状況の分析)では、継続してくれる患者さんも多く、一度A先生の医院に来院頂ければ、患者さんは比較的長く通ってくれるファンになっている傾向がありました。なかなか、認知がなされないため、新患の患者さんが伸び悩む。そんな傾向があるように思えました。当初A先生は焦りもあり、診療時間を伸ばすことで、火急を乗り切っていましたが、ここで発想の転換を図ることをA先生と相談しました。
 

患者さんが少ないという点も、患者さん一人ひとりにじっくりと時間を掛けて治療ができるという見方ができます。ネガティブな部分も見る角度によっては強みになると。例えば物事に臆病な性格は、思慮深さから来るかもしれません。大雑把と言われるような性格は、おおらかな人物で物怖じしない胆力のある性格とも言えます。
 

A先生のケースでは、患者さんが少ない⇒患者さんにじっくりと時間を使えるということ。他にもA先生には、しっかりとしたスタッフが働いてくれていて、A先生もスタッフの意見に耳を傾けられる配慮も出来ていました。収入を単純に伸ばす!というのであれば、診療時間を目一杯に伸ばして頑張るのも一つの手段ですが、A先生とのコンサルテーションの中では、悪戯に診療時間を増やしスタッフに無理を強いて、今の明るい院内環境に不協和音を奏でることよりも働きやすい環境を作ることが大事なのでは?との同意に至りました。そこまで思い至ったら、次は検証です。

 

曜日ごとの患者さんのアポ予約状況を集計し、逆に休診日をしっかりと確保する。(外来患者さんが少ないのであれば思い切って休みにし、訪問など先生自らが外に出て行くことにするなど)という方法を取りました。最近のレセプトコンピュターは毎日の新規患者数や延べ患者数も簡単に出せるので、分析ができます。6ヶ月間の集計で火曜と土曜日が良好で、水曜と木曜が患者さんの需要が少ない事がわかりました。そこで、思い切って水曜を休みにしました。外来の患者さんがファンになってくれているのであれば、訪問に行き、A先生自らが、足元の患者さんは勿論、広いエリアの患者さんにアプローチするのもキッカケさえ作れれば、そう難しくありませんでした。水曜を訪問に充てることで、地域の患者さんの需要を満たしていくことができ何とか低いながらも短期目標を乗りきりました。

 
 

ポイント③
自身の強みを活かして行動し、必ず検証も合わせて

《中期、長期の目標は》
もともとの診療コンセプトに立ち戻り、「高度な医療技術をしっかりと患者さんに説明し治療を施す」という理念を、周囲にしっかりとアピールしていく。という点に最大限に取り組みました。訪問への抵抗がない点などもA先生の強みです。小さな広告を打ってみる。 地域のお祭りなどに参加して地域の方々との関係を築きつつ治療にしっかりと取り組むことで、徐々に口コミの紹介を受けるなど、小さな成功体験の積み重ねが非常に大切でした。

 
小さいながらも一歩一歩の着実な成功体験が、A先生のモチベーションに繋がり、スタッフとの対話を意識しながら新しい取り組みを実行し、医院全員で検証、そしてまた新たに行動していくことを繰り返し、業績を伸ばしていったように思えます。長期目標は、A先生の地域への診療スタイルなので終わりはありませんが、今では当社のお手伝いは卒業し、自身のスタイルを磨き続けていらっしゃいます。当社がコンサルテーションをさせて頂き、A先生の医院経営の軌跡を横で拝見させて頂くなかで、ぶれない診療コンセプトが非常に大切だと改めて認識しました。

 
そういえば、大きな企業も自分の会社のキャッチフレーズってありますよね。「人に優しく」とか「目の付け所が○○でしょ?」など。企業理念に添って会社は新しい価値を生み出すという点では、歯科医院においての診療コンセプトがこれにあたるのではないでしょうか?当社のフレーズは、「明日の歯科医療のために!」A先生に限らず、歯科医療に絶えず真剣に取り組む先生方、そんな歯科医師の皆さんの味方であり続けられるようなコンサルテーションをしたいと思います。

 

A先生のコンサルテーションのポイント 5つ

 

①市場性の再リサーチ

(レセコン患者データと最新の人口状況を用いて再度、市場性の再調査を行なってみた)
⇒ 市場性に変化あり。Drの意見を聴聞。周辺競合との差別化。
⇒ 患者(新患・再初診)の来院も曜日によりバラツキがあるとのことが判明。
Drの意見がデータ上も正しいのか当方で検証(レセコンの日計表と月計表の1日患者数を曜日ごとに抽出、半年間の新患・再初診数を検証・火曜・土曜が良好。最低は水・木)

 

②経費部分の把握

当初計画の段階からかなりタイトな事業計画を組んであり、開業後もDrの自助努力により、これ以上は医院のパフォーマンスを損なう恐れのある水準まで削減(これ以上の削減は得策ではないと判断) 

 

③院内配布チラシで地域の需要状況の把握と来院を促した

《ヒアリング状況を加味しての改善(短期で実施)》
A 診療時間の見直し
上記、検証から患者のターゲット層に当初リサーチの見込み違いは無いため、診療時間の改善とそれに伴うスタッフの労働時間増加による負担を軽減するための非効率稼働日の休診を実行。
B 認知度の向上
 
《改善状況の結果と検証》
それぞれの改善を行うごとにレセプト分析を通じて検証。結果的に、コンサルティングに入ってから一年程度で良好に推移し短期目標は超えられました。 

 

④院内全体で小さな成功体験を積み重ねる

⇒ 一日の収入目標や一ヶ月の目標を定めて、スタッフも含めた全員で物事に取り組んでもらった。

 

⑤Dr自身の自己研鑽した医療技術や考えを外部発信

⇒ 患者さんへの説明含め丁寧な診療を心がけているDrであり、しっかりと治療。診療技術と知識を勉強し自己研鑽している人物であったこと。その学んだ内容や見解を、ホームページやブログで積極的に外部に発信してもらった。

久しぶりに振り返ってみると、最近他の先生方と取組んでいる事もそれほど大きくは変わりません。自院の状況を具体的に正確に把握し、基本的と思えることを中心にコツコツと対応していくことの重要性を感じます。但し、当社が単純なコンサルティング会社ではなく、ファイナンスがある点は大きかっ
たと思います。
 
いかに院長先生が努力されても、一年もの間賃料、スタッフの給与、開業資金借入の返済などの様々な支払いは待ってくれません。開業時から当社が担当させていただいた先生だからこそ、時間を作り出すことが出来たことが大きな要因となっています。

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